【第2回】社会保険の仕組みを知ろう【税金と保険料の違いとは?】
税金と保険料の違いを知ろう
ぱんだしだ~、はじめてお給料貰ったんだけど、なんでこんなに引かれてるの~
どれどれ、ちょっと見せてみて
(私より貰ってる、、、!?)
そ、そうね。じゃあ、どんなものが引かれているのか見てみましょう。
1.控除される項目の違い
控除の項目が給与から引かれている項目よ。大きく分けると税金と保険料の2つに分けられるのよ。
ポイント
- 税金…○○税となっている項目(所得税、住民税)
- 保険料…○○保険料となっている項目(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)
豆知識
税金も保険料も、皆からお金を集めて、それを均等に再分配するもの。
(お金が少ない人からは少なく、お金持ちからはたくさん集める制度になっている。)
両方ともお金を再配分する目的は同じなのに、何が違うの?
じゃあ、税金と保険料がどのように違うのかを確認しておきましょう。
2.税金と保険料の違いを知ろう
ポイント
- 税金…集めたお金の使い道が自由。これを行政の会計上の専門用語で一般会計と言います。
- 保険料…集めたお金の使い道が初めから決まっている。これを行政の会計上の専門用語で特別会計と言います。
※保険料による再分配の制度のことを、特に社会保険と言います。(5種類の制度がある。)
上記のポイントをイメージ図で確認しましょう
一般会計予算ってニュースで聞いたことがある気がする!
介護保険とか国民年金とかってのも聞いたことはあるけど、こんな仕組みになってたんだね!
社会保険ってどんなもの?
ここからは、社会保険に関して、もう少し詳しく見ていきましょう。
保険だから、自動車保険みたいに事故が起こったときにお金が貰えるのかな?
とりちゃんは相変わらず察しが良いわね。
社会保険では、社会生活を送っていくのに困難なことが起きた場合に、お金が貰えるのよ。
この困難な出来事のことを保険事故って言うのよ。
1.社会保険の用語
まずは、社会保険で登場するいくつかの用語を下のポイントで確認しておきましょう。
ポイント
- 社会生活を送っていくのに困難な出来事のことを保険事故という。
- 保険事故が起きた場合に、お金が貰える。これを保険給付という。
- 保険給付は、事前に集めていた保険料から行われる。この保険料を集めて保険給付を行う機関を保険者、保険給付が行われる人を被保険者という。
用語だけでは分かりづらいので、具体例で見てみましょう。
社会保険の具体例:医療保険
Aさんが病気やケガで、病院を受診する場合。(Aさんの保険証の負担割合は3割。)
用語の具体例
- 保険事故=病気・ケガ
- 保険給付=7割分を保険者が負担
第1回で、患者さんが保険証の割合分をお会計で負担していたけれど、残りの分は保険者が負担してくれるんだね!
でも、患者さんは保険者から直接お金を貰う訳ではないんだね。
良いところに気が付いたわね。患者さんが、全額を支払ってから返金すると手間になるから、医療や介護では、医療を提供する病院や薬局が保険者が給付する分を差し引いてお会計をするの。このような保険給付の方法を現物給付と言うのよ。
ポイント
- 医療や介護で、保険者が給付する分を差し引く形で行う保険給付の方法を現物給付という。(医療や介護サービスという現物自体を給付している。)
※逆に、保険者が被保険者に、直接お金を渡すような保険給付の方法を現金給付という。
2.保険事故の種類と社会保険の種類
社会生活を送っていくのに困難な出来事(=保険事故)の種類は、主に下記の3つよ。
この3つが、日常生活で起こるのか、仕事中に起こるのか、で区別されるのよ。
ポイント
- 社会保険で行われる補償は、医療・介護に対する補償(病院・薬局などにおける保険給付)と、保険事故で失った所得に対する所得補償の2種類がある。
所得補償というのは、働けないことに対する給与の補償を、会社の代わりに国が行ってくれる、ということだね!
これらの区分を、社会保険の5種類の制度に当てはめて考えてみましょう。
保険事故❶:病気・ケガ
※表は横にスクロールできます。
保険事故 | 保険給付の種類 | 業務外・上 | 制度の種類 | 保険給付の名称 |
---|---|---|---|---|
病気・ケガ | 医療の現物給付 | 業務外 | 医療保険 | 療養の給付 |
業務上 | 労災保険 | 療養補償給付 | ||
所得補償 | 業務外 | 医療保険 | 傷病手当金 | |
業務上 | 労災保険 | 休業補償給付・傷病補償年金 |
ちょっと難しいけど、保険給付の名称まで載せておいたわ。ここではまだ、保険給付の名称まで覚える必要はないわよ。重要なのは、それぞれの制度に対して、複数の保険給付がある、ということよ。上記の表で言えば、医療保険には、医療の現物給付だけじゃなくて、病気・ケガで働けないことに対して、傷病手当金という所得補償の制度もあるの。
薬局で、労災の患者さんが医療保険を使えないのは、業務外と業務上で、補償を行う社会保険が別になっているからだね!
労災で働けないときに給与の補償があるのは何となく知ってたけど、医療保険にも給与の補償制度があるんだね。
豆知識
保険給付の名称
- 医療に対する保険給付の名称には、療養という言葉がつく。
- 労災に対する保険給付の名称には、補償という言葉がつく。
※健康保険における所得補償は、傷病手当金という名称が付いています。
※労災でも、通勤時の災害に関しては、補償という言葉が付きません。
保険事故❷:障害
※表は横にスクロールできます。
保険事故 | 保険給付の種類 | 業務外・上 | 制度の種類 | 保険給付の名称 |
---|---|---|---|---|
障害 | 所得補償 | 業務外 | 年金保険 | 障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金) |
業務上 | 労災保険 | 障害補償給付 |
障害で働くことが難しい場合にも所得補償の制度があるのよ。
保険給付の名称には、そのまま障害という言葉が付くわ。
保険事故❸:死亡
※表は横にスクロールできます。
保険事故 | 保険給付の種類 | 業務外・上 | 制度の種類 | 保険給付の名称 |
---|---|---|---|---|
死亡 | 所得補償 | 業務外 | 年金保険 | 遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金) |
業務上 | 労災保険 | 遺族補償給付 |
亡くなってるのに、所得補償ってどういうこと?
これは、亡くならなかった場合に稼げていたであろう所得に対する補償なの。(逸失利益と言います。)亡くなった人の遺族に対して補償が行われるの。
だから、保険給付の名称には遺族という言葉が付くのよ。
保険事故❹:その他の保険事故
ここまでは、病気・ケガ、障害、死亡という3つの保険事故について話をしてきたけれど、それ以外に有名な保険事故をまとめておくわね。
※表は横にスクロールできます。
保険事故 | 保険給付の種類 | 業務外・上 | 制度名 | 保険給付の名称 |
---|---|---|---|---|
老齢 | 所得補償 | 業務外 | 年金保険 | 老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金) |
失業 | 所得補償 | 業務上 | 雇用保険 | 基本手当(いわゆる失業保険) |
介護の認定 | 介護の現物給付 | 業務外 | 介護保険 | 介護給付・予防給付など |
老齢年金が、世の中でよく言われている年金のことよ。老齢で働けなくなってしまったことに対する所得補償ということなの。ちなみに、日本では65歳からを高齢者というので、老齢=65歳以上になること、つまり、65歳以上の高齢者になると、年金が貰えるってことね。
年金って、高齢者だけが貰えるものだと思っていたけど、障害や死亡でも貰えるから、年金は3種類あるってことだね。びっくり!
失業して働けないことに対する所得補償は、基本手当と呼ばれるもので、雇用保険という社会保険の保険給付なの。
一般的には、失業保険と呼ばれているものね。これは、昔は失業保険という名称だったのが、今は名称が変わっているんだけど、その名残ね。
雇用保険ではその他に、育児休業を保険事故とした育児休業給付金という所得補償の制度などもあるわよ。
介護保険の保険事故は少し特殊で、要介護認定・要支援認定と呼ばれる介護の認定を保険者から受けないと保険給付を受けることが出来ないの。詳しくは、介護保険で学習しましょう。
沢山あって頭が混乱してきたよ~
ぱんだしだ、まとめよろしく!
3.まとめ
まとめ
- 社会保険は、決まった数しかない。5種類の制度。(社会保険ごとに法律がある。)
- ひとつの制度に、保険事故や保険給付がひとつとは限らない。ほとんどの制度に、複数の保険事故・保険給付がある。
- 保険給付の種類には、医療・介護の提供と所得補償の2種類がある。(特に、保険事故が病気・ケガの場合、両方の保険給付があることに注意。)
※ここに登場した保険事故や保険給付もほんの一部です。
※表は横にスクロールできます。
種類(広義) | 種類(狭義) | 業務上・外 | 制度の種類 | 主な保険事故 |
---|---|---|---|---|
社会保険(広義) | 労働保険 | 業務上 | 労災保険 | 病気・ケガ、障害、死亡 |
雇用保険 | 失業 | |||
社会保険(狭義) | 業務外 | 医療保険 | 病気・ケガ | |
介護保険 | 介護の認定 | |||
年金保険 | 老齢、障害、死亡 |
社会保険という言葉は、2種類の意味で使われるから気を付けてね。すべての制度を合わせて社会保険とも呼ぶし、労働関係以外のものを社会保険と呼ぶこともあるの。上記の表では、広義・狭義という形で区別しているわ。
労災保険と雇用保険は、会社で労働しているリスクに対する保険だから、まとめて労働保険と呼ばれるわ。
重要なのは、社会保険(広義)には5種類の制度がある、ということよ。